21世紀の医療は、予防の時代と考えられています。これまでの病気になってから治療する医学(治療医学)に対し、病気にならないように日常から予防する医学(予防医学)への転換がはかられています。予防には、一次予防、二次予防、三次予防の三つの段階があります。一次予防とは、健康的な生活を送りながら危険因子を除去し、疾病の発生を抑えることを目標としています。二次予防とは、疾病を早期に発見し早期に治療することで、健康診断や人間ドックがこれに相当します。三次予防とは、合併症や再発の予防です。一般に、予防といった場合には、一次予防を指します。

 

 1971年ニクソン大統領は「war on cancer」を宣言し、ガンの撲滅を目指して豊富な資金をガン研究に投入しました。そのため、ガン治療法は著しく発展しましたが、発症率、死亡率の低下には直接結びつきませんでした。一方、1982年アメリカ国立科学アカデミーは、ガンに及ぼす要因について、人を対象とした疫学調査の研究結果をまとめて、ガンの発症を予防するため、喫煙をやめることと、食事の内容を改善し、果物と野菜を多く摂取することを推奨する勧告を行いました。

 

 この勧告を受けて、アメリカでは、果物と野菜を400g以上摂取する「5 A DAY運動」が1991年から始められ、ガンの死亡率、罹患率ともに減らすことに成功しました。開始から10年が経過したところで、この運動に対する査定が行われ、アメリカで最も成功した健康施策であると高く評価されました。そのため、当初400gとした果物と野菜の摂取量を400800gに改定し、なるべく800gに近づけるようにとしています。また、ガンだけでなく心臓病など生活習慣病の予防にも効果があると認めて現在も積極的に運動が推進されています。

 

 我が国でも平成12(2000)年に「食生活指針」が策定され、心身ともに健康で豊かな食生活の実現に向けて、「毎日くだもの200グラム」などの普及・啓発が進められてきました。しかし、果物・野菜の摂取不足などがなかなか改善されないため、「何を」、「どれだけ」食べればよいのかを分かりやすく示した「食事バランスガイド」が作成されました。アメリカの「5 A DAY運動」の成功に見られるように、毎日果物を2つ摂取することを含め、バランスのとれた食生活は健康づくり、生活習慣病予防に効果があります。また、治療費の削減、食料自給率の向上にも寄与すると期待されています。

 

 しかし、健康を維持・増進し、疾病を予防する運動がなかなか進まないのは、予防は効果が表れるまでに時間がかかる上、予防に成功しても実践した人自身が、なかなかその効果を実感できないためと考えられています。それに対して、治療は、短時間のうちに疾病が改善されるので効果を実感できます。従って、実践者に予防効果を実感してもらうために、果物などを食べると健康の維持・増進に役立つとする科学的な証拠を提示することが大切であるとされています。